建物としてのMOA美術館

趣味はなんですかと聞かれた時に、口が裂けても「美術館巡りです」なんて言わないですが、 月に1回ほど地元へ帰るついでなどに美術館や写真展に足を運ぶことがあります。

建物としての美術館が好きだったり、
館内の澄んだ空気感や併設されている
カフェが目的だったりするので、芸術鑑賞を主とされている人と同じ括りにされては荷が重過ぎるのです。

そろりそろりと歩いては作品の前で足を止め、自分にしか聞こえない声で「ほー」とか「へー」と言い、わかった素振りでうなずきます。

実際には作品の理解などは程遠く、
色使いが素敵だなぁ、モチーフ惹かれるなぁ、など自分の中の好みの確認の時間にあてられます。

書店の参考書フロアをうろうろしているだけで全能感を得ていた学生時代からあまり変わっておらず少し哀しくなります。

そんな中先日熱海のMOA美術館に行ってきましので、建物としての魅力をお伝えできればと思います。

熱海駅のバスターミナルから7分
、 山の中腹にある入口から館内へ足を進めるとアートストリートと名付けられているエスカレーターが出迎えてくれます。

SFの世界のような幻想を感じながら7基のエスカレーターを乗り継ぎ展示室までの約10分間。

空間に浸り、写真を撮り、途中階段を使ったり、
「みんな寺社仏閣の階段はありがたく登るのに駅の階段は疎まれていて不憫だなぁ」とかどーでも良いことを考えるのにちょうどいい長さです。

展示室への大きなエントランスを入ると、
滑らかに影を写す凛とした大理石の床と壁面のガラス窓が目にはいります。 

窓から見える山並みと
空の余白が一つの作品のようで、
目にするたびにたまたまなのか偉大な建築家の方だし考えて造ったのか自分の中で議論があります。

並んで歩いているご夫婦の後ろの木が窓の枠いっぱいまで伸びた時に切り倒されたら
余白を考えて作られていた証になると自分の中で結論付けました。

館内は晴れていれば熱海の街並みと海が一望できるのですがこの日はあいにくの雨でした…。

展示をひと通り見て、わかってる風に頷き終わった後はカフェスペースへ。

個人的にですが美術館のカフェや休憩スペースは
“この空間にはこのイスとテーブルしかない”みたいなフィット感をくれる事が多く、
心地よさがありとても好きです。

“なんとなく好き”の”なんとなく”の部分を を深掘りしなさいと同じカフェスタッフに言葉をもらうので考えてみると、

よく、”ファッションは3色でまとめると上手くいく”なんて言われますが、それは空間にも言えるのかなぁと素人ながらに思いました。

MOA美術館のエントランスやカフェスペースは、床やイスの白と黒+ガラスの薄い青と少ない色味で構成されていて、それが整然とした印象をくれるのだろうと考えました。

人生を捧げて作者の内面を表現した美術に触れ、自分の趣向や興味も再確認させてくれる美術館。

ぐるぐると考えを巡らせたあと秩序ある空間で飲むコーヒーはとても美味しかったです。

わた